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ベルリンからローカルな環境政策や草の根NGO・市民活動、サステナブルな暮らしなどをレポート。


by yumikov

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原子力発電所を考古学的に撮った映画『Unter Kontrolle』

今年のベルリナーレで観る予定が、息子の急病でドタキャンした映画『Unter Kontrolle』(英訳するとunder control)の上映が始まったのでようやく観てきました。

このドキュメンタリーではドイツ各地とオーストリアの原発施設を次々とめぐります。

私も4月に訪れたグローンデ原発から始まり、福島原発後の措置で1号機が停止となったフィリップスブルク原発、東西ドイツ分断時代に東ドイツぎりぎりに建てられた放射性廃棄物貯蔵地モアスレーベンの地下、旧東にあり廃炉となったがいまだ解体作業の続くグライフスヴァルト原発、運転前にあえなく廃炉となって今は遊園地となっているカルカー高速増殖炉、同じく完成したものの国民投票で操業ストップとなったオーストリア最初で最後の原発ツヴェンテンドルフ原発などなど。

「原子力の考古学」という副題がついたこの映画、一世紀前の機能美というかテクノロジーや建築美といったものを描いているということで話題になっていました。「ユートピアは現実によって挽回された」。皮肉にも今このタイミングでの公開です。トレーラーはこちらから。未来から撮ったようなこの映画、日本でこそ多くの人に観てほしいと思ったし、20年後にもう一度、息子と一緒に観てみたいと思いました。

ところでオーストリアのツヴェンテンドルフ原発は、現在はドイツなど外国の原発作業員研修に使われているとは聞いていたけれど、2年前になんと太陽光発電所に生まれ変わったそう!外壁などにソーラーモジュールを搭載。そして福島第一原発と同時期(70年代初頭)に建てられ構造も同じ沸騰水型軽水炉で、安全に見学できるということからメディア対応に追われているそうです。放射線よりも太陽光を浴びようというのがオーストリアの選択。
# by yumikov | 2011-06-29 05:07 | 環境のこと

エルダーフラワーのシロップづくり

今年こそ忘れずにやりたかったことのがエルダーフラワーのシロップづくり。5月頃から公園やあちこちに自生しているこの白い花を咲かせる木がそうです。
エルダーフラワーのシロップづくり_f0157115_592980.jpg
エルダーフラワーのシロップづくり_f0157115_520622.jpg
これが熱冷ましに効くというので、息子の保育ママから奨められたのが最初。飲んでみると実においしいく、以後我が家では常備品となっています。シロップはスーパーで買えます。

こないだキャンプ帰りにこのエルダー(セイヨウニワトコ)の花を摘んで、水に一昼夜浸しておいたら・・・、とってもかぐわしくおいしい!公園の木はもう実をつけていたけれど、クラインガルテンではまだ花を咲かせていたのでもう一度作りました。儚いものは尊いなぁ。シロップにすれば保存がきくけど、いつかたくさん収穫できたらにしよう。
# by yumikov | 2011-06-22 05:31 | ベルリン生活のこと

グローバルネット記事『原子力エネルギー×持続可能な発展のための教育(ESD)』

月刊誌『グローバルネット』で連載中の「ベルリン発サステナブルライフ考」。5月号のテーマは、サステナビリティ教育の視点からみた「原子力エネルギー」です。タイムリーな話題を多くの方に読んでほしいという編集部の計らいで、通常よりも早いタイミングでの転載を許可いただきました。グローバルネットの特集も「災いを転じて・・・」と興味深いものですので、本誌のほうもぜひお読みください。

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(以下、地球・人間環境フォーラム発行の月刊誌『グローバルネット』5月号より転載)

ベルリン発サステナブルライフ考
原子力エネルギー×持続可能な発展のための教育(ESD)
翻訳者 ユミコ・アイクマイヤー


3.11の後、ドイツの教育関係者も対応に大わらわだ。地震や津波そして原発事故について子供たちに説明する必要性に迫られているからだ。州の教育担当や環境教育や政治教育センターなど、まず現場に近い機関が迅速に動いて授業に活用できる情報源をまとめた。教材専門の出版社は専用の教材を作成し、無料ダウンロードできるようにした。政府も背景情報を学ぶための情報源などを公開している。エネルギー教育を行うNGOはひっぱりだこだ。ドイツの子供たちも不安を抱えており、親としても説明が求められる。

 そのなかで教育・科学組合(GEW)の反応が注目されている。これは保育士や教員、研究者の労働組合であり、ドイツ最大の労働組合組織ドイツ労働総同盟(DGB)の傘下にある教育部門という位置づけである。GEWは3月17日開催の理事会で一つの宣言文を採択した。これは日本の災害を受けた宣言で、原子力エネルギーとの決別を名言している。

 宣言文の後半の要旨は以下の通りだ。「われわれは教育者の組合として、今日および将来世代が人間の尊厳ある健やかな生活を送れることを目指しており、そのため原子力エネルギーの利用を明確に拒否する。原子力発電所の稼働延長を即刻撤回し、脱原発を貫くことを(政府に)要求する。青少年や大人が日本の災害を正しく理解する手助けをし、大学講義や授業、保育、研究会、公的な催しなどにおいては、原子力の危険性を批判的に見た上で解釈するよう、組合員に呼びかける。学校や大学のカリキュラムに持続可能な発展のための教育(ESD)を組み込むことを求める。大学や研究機関、研究助成機関、研究者個人には、自らの研究活動の帰結を常に省察し、科学の社会的な責任を意識することを期待する。大学や研究機関は研究やテクノロジーの影響を体系的に研究し、その結果を公で議論できるようアクセス自由にしなければならない」
 GEWはすでに1980年に原子力のエネルギー利用を拒否する採択をしているが、3.11を機にその立場を強めていく決意を発表したことになる。

 ドイツでエネルギー教育といえば再生可能エネルギーや省エネが中心で、原子力をメインに据える例を聞いたことがなかった。そこで教員やESD関係者、NGOに話を聞き、各州のカリキュラムも見たが、学校の授業自体で扱う内容に大幅に差があるとは思えない。原子力産業による教材もあるが、電力会社も教育活動としては火力発電に重点を置いている。調べるうちに、原子力エネルギーを持続可能な発展のための教育(ESD)で扱う例が出てきた。


話題を呼んだ連邦環境省の教材

 ドイツ連邦環境省は2007年に「停めても全然問題ない?〜脱原発をめぐる事実と論点」という教材を作成した(下写真)。これは脱原発政策を進めた前政権下で作成されたもので、教員が自由に活用できるようウェブサイトからダウンロードできる。子供たちがドイツの原子力エネルギー利用の実状やリスクを整理し、対立するさまざまな意見を知った上で、年齢相応の自然科学的・技術的知識に照らして原子力エネルギーに対する自分の考え方を構築し、それを精査できるようになるのがねらいだ。

 教材は、ワークシート、参考情報、インターネットでの調べ学習のためのリンク集、理解度チェックのためのテストと解答例、教員向けの情報で構成されている。対象は8〜10学年(13〜16歳)だ。ワークシートは、電力供給、気候影響、原料、事故、放射性廃棄物と最終貯蔵をテーマに対立する意見を学びながら進む。合間にはリスクに対する見方の違いや、チェルノブイリ事故の経過、世界での原子力エネルギー利用とその事情、各原子力発電所の停止スケジュール(当時)などの情報も掲載されている。教員向けの情報としては、ワークシートの活用法や解説、カリキュラムや各教科との関連が書かれていて、科学的リテラシーの説明と練習問題での評価法、ESDの対象となるコンピテンシーの説明と自然科学分野での学習目標の例、原子力エネルギーをテーマとした学習目標の例などが丁寧に説明されている。

 ドイツのESDの第一人者ベルリン自由大学のデ・ハーン教授が教材開発のプロジェクトメンバーに入っていただけのことはある。これを読むと、魅力的で前向きな原子力エネルギー授業ができそうな気になる。教材は国連ESDの10年のドイツオフィシャルプロジェクトの認定も受けている。練習問題に「地球サミットで定められた予防原則と照らして原子力エネルギーを捉えると、どのようなことが導き出されるか」といった問いまで登場するのには驚いた。確かに中立的に対立する意見を取り上げてはいるが、私には脱原発を正しく理解するための「脱原発教材」に見える。

 脱原発を望む人びとは政策の流れに合わせて作成されたこの政府の教材を歓迎した。しかし、連邦経済技術省や一部の政党からは「原子力に対してネガティブな見方に偏っている」「現在開発中の技術の説明やデータが載せられていない」など強い反発が起きた。しかし環境省は対応を変えなかった。現政権に代わった直後、この教材は突然ウェブサイトから消えた。今度はNGOが抗議し、現在はまた配布されるようになった。脱原発をめぐる議論が急速に動いている今、一部の内容は現状と合っていないが、原子力というテーマを前向きに扱う視点として、今なお参考に値する。


若者による若者のためのエネルギー教育

 上写真の三つ折りリーフレットはシリーズになっている。「ウランはどこからくる?」「核廃棄物はどこへ?」「原子力発電は温暖化を救う?」「原子力発電の電力は一体いくら?」など、原子力にまつわるティーンエージャーからの代表的な質問に答える形式だ。このリーフレットを作ったのは、自然の友という自然保護団体の青年部が立ち上げた「脱原発に関する環境教育イニシアティブ COUNTDOWN 2021」である。メンバーは16〜24歳の若者だ。

 彼らは、脱原発はESDにおいても重要なテーマであるとみなし、若者への情報発信を行っている。脱原発を考えるには十分な背景知識が必要だが、若者にとっては専門的な情報や報道をそのままのかたちで消化するのは難しい。それをかみ砕いて説明しているのがこのリーフレットだ。学校授業での活用も勧めている。ウェブサイトも充実しており、脱原発に関する情報を発信している。各政党の脱原発に対するポジションも公開しているが、これは原子力発電所の稼働延長が争点となった2009年の総選挙前に、各候補者に公開質問状を出して得た回答だ。ここで彼らは、エネルギー政策は未来世代に関わる問題であるにも関わらず、選挙権がない18歳以下は問題の決定に参加することができないという矛盾を突きつけ、選挙権のない子供たちの声も代表することになることを念頭において欲しいと訴えている。

 政府の教材の最後は、ドイツ基本法第20a条の言葉で締めくくられる。「国家は将来世代に対する責任においてもまた、生命に不可欠な自然条件を保護する」。サステナビリティの視点で原子力エネルギーを見る。私たちもそのトレーニングをしていこうじゃないか。
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ドイツ連邦環境省の教材「停めても全然問題ない?〜脱原発をめぐる事実と論点」へのリンクはこちら

脱原発に関する環境教育イニシアティブ COUNTDOWN 2021へのリンクはこちら
# by yumikov | 2011-05-24 20:06 | 環境のこと

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月刊環境情報紙グローバルネットにて”ベルリン発サステナブルライフ考”連載中。(2010年5月号〜)

NPO法人「持続可能な開発のための教育の10年」推進会議(ESD-J)のドイツ地域レポーターをやっています。

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