ベルリンからローカルな環境政策や草の根NGO・市民活動、サステナブルな暮らしなどをレポート。


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グローバルネット記事『都会の子供の遊び場』

月刊誌『グローバルネット』で連載中の「ベルリン発サステナブルライフ考」。7月号では都会の子供の遊び場というテーマで書きました。ベルリンほど子育てしやすい”都会”というのはそうそうないように思います。あくまで”都会”の話ですが。

原稿で取り上げたのは主に子供の遊び場ですが、ベビーカーと一緒に入れる映画館、子供の遊ぶスペースのあるカフェやパン屋さんそしてビアガーデン、子育て中でも多くをあきらめまいとする子育て世代の親のためのサービスも充実しています。

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(以下、地球・人間環境フォーラム発行の月刊誌『グローバルネット』7月号より転載)
ベルリン発サステナブルライフ考
都会の子供の遊び場
翻訳者 ユミコ・アイクマイヤー


 「少年少女は誰でも本能のおもむくまま思いっきり遊ぶ性分だ。それには動物や水、泥んこ、草むら、遊ぶための空間といった彼らと同じく徹底的にエレメンタリーなものが必要だ。これらなしで、絨毯やぬいぐるみ、舗装された道路や庭で育てることもできる。それでも生きるのには困らないが、彼らが後になって基本的な社会性の一部を体得できていなくても驚かないことだ。」アレクサンダー・ミッチャーリッヒ(ドイツの精神分析医兼作家)

 都心での子育てには車の交通や大気汚染など心配がつきまとう。ドイツ各地にある市民農園クラインガルテンは別名シュレーバーガルテンといい、自宅に庭のない都会の子供の健康を保つ機能としてシュレーバーさんという医師の提唱で19世紀半ばから広まったものだ。私たち家族もささやかな自家栽培のために4年前から借りているが、おかげで息子もミミズやカエル、ハチ、てんとう虫などと出会い、野菜づくりの様子を目にすることができている。

 子供の一般的な遊び場としての児童公園は、ベルリンでは充実している。街のいたる所に見受けられる印象だが、公的な児童公園は18歳以下の子供50万人に対し1,850ヵ所で、ベルリン児童公園法の指針の6割に過ぎず増設中だという。標準的な児童公園で2,000m2以上とゆったりとしており、起伏があったり近自然的な小川が流れたりと、画一的ではない。遊具は木製がスタンダードで、周囲の植栽にもよくとけ込んでいる。EN 1176というヨーロッパ19ヵ国共通の安全基準が遊具には適用され、認証機関TÜVの検査と認証が求められるため安全性も高い。ここはバイキング、あちらはインディアンと、公園ごとにコンセプトが異なり、カフェめぐりならぬ遊び場めぐりをするのも楽しい。
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 ベルリンの素敵な遊び場ランキングの上位にいつも入ってくる遊び場、通称ドラゴンランド(写真上)。それもそのはず、子供が計画に参加してできた遊び場だ。子供たちからの注文は、大きな子も小さな子も安全に遊べ、外からも中からも登ることができ、すべり台がついていて水遊びができるドラゴンだった。都市計画を請け負う会社が計画ワークショップに地域の子供たちと親を招き、そこで出た案を景観計画会社がモデルに起こした。仕上げの塗装なども子供たちが手伝い、全長17mの木製のドラゴンができあがった。この地区だけでも三つの遊び場が子供参加プロセスによって誕生している。

東で始まったプレイカー運動

 近所の教会前広場には、多彩な遊び道具を満載したワゴンが毎週やってくる。遊びを出前するというアイデアだ。このプレイカーは春から秋までの間、区内五つの広場を日替わりで回っている。今でこそ行政からの補助で2人の保育士が雇われているが、もとは旧東ドイツ時代に人口密度の高いこの地域で親たちが自主的に始めたもので、当時はリヤカーで遊具を運んだという。今は大概どの広場にも遊び場はあるのだが、プレイカーが運んでくるのは遊具だけでなく「テーマ性のある遊び」だ。今週は鍛冶屋、来週は病院、再来週は船乗り、と原っぱに別世界が登場する。とはいえ道具は板や棒などの廃材や布やロープで手作りしたシンプルなものばかりで、遊び方は子供たち次第だ。保育士は子供たちのサポートはするものの、想像力の邪魔をしないよう極力口は出さない。こうした可動性のある遊び場なら子供人口の変動にも柔軟に対応できる上、何しろコストが少なくて済む、といいことづくめだ。

西で始まった子供農園と冒険遊び場

 私たち家族がよく足を運ぶのがクロイツベルクの子供農園だ。園内ではヤギやウサギ、ロバやアヒルなどの動物が飼育されており、子供たちは指導を受けながら動物に触れたり餌をやったりできる(写真下)。ハーブガーデンがあったり、砂場などの遊び場やカフェも併設されている。就学年齢にもなれば、廃材などのガラクタを使って隠れ家作りなどができる冒険遊び場というのもある。ツリーハウスを作ったり、藁と土でレンガを作って壁に積み上げたりと、大人でも夢中になりそうだ。ここではノコギリもトンカチも、火を使うことも許される。親としてはハラハラしそうな場面もあるが、そこは指導員がいて安全面に配慮しているだけでなく、こうした場での事故や怪我がむしろ少ないことは証明されている。
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 この冒険遊び場は、整備された遊び場を子供に与えるよりも、荒れた空き地に子供自身が世界を作るほうがいいという発想で1940年代にデンマークで始まり、以後ヨーロッパに広まった。ドイツでは戦後の復興で時を待ったが、1960年代終わりから70年代頭の学生運動が盛んな時期に、オルタナティブな教育が求められた流れで、冒険遊び場が西ドイツに次々と建てられたというのもうなずける。ベルリンの壁崩壊後には、東ドイツでプレーカー運動をしていた人びとが中心となって、旧東にも子供農園や冒険遊び場が作られ、現在はドイツに400ヵ所以上存在するという。ドイツでは子供農園と冒険遊び場は、都会で自然環境への責任や、限りある資源を実践で学ぶ施設として共通の理念やコンセプトを持ち、併設されていることも多い。家畜の糞からコンポストを作り、それで野菜づくりをしたり、冒険遊び場に小動物のための巣を設けたりと、二つを線引きする必要がないのだという。ここでは年齢も性別も国籍も異なる子供が、違いを個性として尊重して共に遊び、社会性も育める。持続可能な都市づくりの先駆的な例としても広く認められている。

みんなの自発性から育てる遊び場づくり

 これらの遊びの場はいずれも親が主体となってボランタリーに始めたもので、活動が行政に認められてサポートを受けるようになった点が共通している。誰もがアクセスできるようにと利用料というのはない。だが、自治体の財政も逼迫するなか、寄付やボランティアは重要な支えとなっている。また、プレイカーでは遊具のメンテナンス、子供の農園では家畜小屋の掃除などと、子供も遊ぶだけでなく主体的に手伝う。これら施設には誰もが自主的に関わっているのだ。

 私自身は田舎で育ったので、幼い頃の遊び場は田んぼのあぜ道や庭や畑、用水路など、たまにお寺のブランコに乗るくらいで公園で遊んだ記憶がない。ベルリンは都市なりに上述のような魅力的な遊び場があるが、それでも都会での子育てには戸惑いがある。そうこうするうちに、とりわけ日本では、安全な空気や水、土壌が手に届きにくいものとなってしまった。子供たちから水たまりや砂場を取り上げることなど誰がしたいだろうか。今、子育て世代の自発性が試されているような気がしてならない。

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by yumikov | 2011-08-24 17:04 | 環境のこと

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