ベルリンからローカルな環境政策や草の根NGO・市民活動、サステナブルな暮らしなどをレポート。


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グローバルネット記事『暖房キノコとたばこのいい関係?』

月刊誌『グローバルネット』に連載中の記事、3月号には暖房キノコと呼ばれる屋外用ヒーターを取り上げました。
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(以下、地球・人間環境フォーラム発行の月刊誌『グローバルネット』3月号より転載)

ベルリン発サステナブルライフ考
暖房キノコとたばこのいい関係?
翻訳者 ユミコ・アイクマイヤー


ヨーロッパでの暮らしでカフェは身近な存在で、皆ゆったりと時を過ごしているように見える。とくに人気なのが店外のオープンカフェスペースだ。夏場など外は満席、店内はがらがらということはざらだ。肌寒い季節でもコートを着たまま外に腰かける人も珍しくない。それが何年前からだろうか、カフェやレストランのオープンスペースで長身の円筒型のヒーターを目にするようになった。アルミニウムの反射板が傘となっているその姿から暖房キノコと呼ばれている(写真)。

煌々と火が焚かれるそばに腰を下ろせば、暖をとりながら食事やお茶ができるというわけだ。調べてみると2004年の冷夏の際に人気が急上昇し、2008年までにベルリンだけでも5,000台に増えたといわれる。

喫煙者の健康を守る?ガスヒーター

 暖房キノコの繁殖に拍車をかけたのは禁煙法だ。ドイツでは2007年から州ごとに法を定めて公共の場や飲食店内での喫煙禁止を導入してきた。バーやビアホールでもたばこが吸いたければ外に席を取らざるを得ない。それで冬場の客足を確保するために暖房キノコを導入する店が増えた。禁煙法はEU(欧州連合)全体で導入が進んでおり、フランスやスウェーデンなど他のEU諸国でもこうしたガスヒーターが増えている。

 しかし温暖化対策の観点から規制する都市も増えている。暖房キノコ1台が排出する二酸化炭素(CO2)は、年間最大4t(ガス式で週36時間使用の場合)にのぼるという。テュービンゲンやプフォルツハイムなどでは完全に追放した。しかしシュツットガルトのように逆の展開もある。すでに市街地では規制されていたが、禁煙法導入後に強い反発が起き、20時以降は使用していいことになった。スイスでは連邦議会にかけられたが国レベルでの規制には至らなかった。店外でたばこを吸わざるをえない喫煙者を肺炎から守るためには必要という声もあったというからあきれる。

 しかし、「喫煙者は外、嫌煙者は内」がいいアイデアなのかは疑問だ。喫煙者が外に追いやられていると感じている一方で、嫌煙者にはオープンカフェの外のベストな席を喫煙者が占有しているように見える。メインの部屋とは別に喫煙室を設置することは認められているが、それができない小さな店には外しか残されていない。禁煙法は各州で波紋を呼んでおり、いまだに嫌煙者と喫煙者の共存が議論されている。

行政とメーカーの攻防戦

 現在ベルリンでは気候保全法制定の動きがあり、その枠組みで州レベルでの暖房キノコの禁止が検討されている。しかし法案の調整に時間がかかり、思うように進んでいない。12のうちの5つの区は、しびれを切らして2009年から公道での暖房キノコ規制を独自に開始した。路上での営業には道路法の特別営業許可が適用されるが、暖房キノコは対象外とする。しかし地区ごとに取り締まりが異なるため、効果もばらばらだ。撤去が進んでいる地区もあるが、行政の通告を無視している地域もある。年中旅行者が絶えないため100ユーロ程度の罰金など痛くもかゆくもないようだ。2つの地区での規制を導入しているハンブルクでも同じことが言える。

 禁止から2年が経った現在も、一部のレストランやカフェではあいかわらず暖房キノコを使っている。なんと、よく見ると半数近くが電気式だ。暖房キノコは当初ガス式だったが、メーカーが「環境にやさしい電気式」を出し始めたのだ。現状で規制対象はガス式だけだからである。外壁に固定するタイプの赤外線暖房も登場している。路上に設置するわけではないので将来的にも道路法の規制対象にならないだろうと踏んでのことだ。暖房キノコの名づけ親でベルリンで販売・リース会社を営んでいるミヒャエル・シュルツ氏は規制対策に追われている。同社のWebには「ここはいつでも常夏さ!」のうたい文句が目につく。暖房キノコが1本売れるごとに、木を1本植樹するキャンペーンを開始したのは、規制への反発からとしか思えない。

ニーズを踏まえたサービスを

 飲食店の本音はどうなのだろう? ふたを開けてみれば規制を歓迎している飲食店も少なくない。暖房キノコの維持には当然コストがかかる上、安全管理も必要だ。お客が流れるのを恐れていただけで、近くに暖房キノコを使う店がなければあまり問題はないわけだ。お客の方も本当に外の暖房を必要としているのかは疑問だ。多方面で環境政策が導入されているお国柄、暖房キノコは結構目立つ存在だ。怪訝そうな顔でその脇を通りすぎるのは私だけではない。地元の人に愛される店になるには、もっと長期的な視点で見て別の面でサービスに力を入れるべきだろう。

法的規制か、自主協定か
 
暖房キノコの規制によって、ガスから非効率な電気の熱利用へ切り替わったのは悩ましいことだ。緑の党はこうした状況を受けて、「暖房キノコは毒キノコ」キャンペーンを開始した。ガスだろうが電気だろうが、固定式も可動式も、公道でも私有地でも、いかなる方法であれ外気を暖房するという愚かなこと自体を禁止せよという主張だ。ヒーターの種別で規制してもいたちごっこになるのは経験が証明しているからだ。州政府の気候保全法制定に時間がかかるなら現行のベルリン省エネ法を改正して規制するよう求めている。それができればいいとは思うが、ドイツ全体で暖房キノコが減るわけではない。

 ドイツ連邦環境庁も屋外での暖房使用自体を問題視して、環境負荷をわかりやすくパンフレットにまとめて配布しているが、連邦レベルでの規制に踏み込む様子は今のところない。EUレベルで暖房キノコを法的に規制することも考えられるが、大変な事務作業を伴うため、むしろミュンスターの自主協定のような自主的な放棄が望ましいとしている。

 ミュンスター市はホテル・飲食店組合と協力して、店ごとの自主的な取り組みを呼びかけている。ブランケットを無料配布し、暖房キノコ放棄宣言をしてもらうというものだ。約30店舗が参加しており、卓上にはシロクマの写真の宣言文が並ぶ。これは一人の市民の行動から始まった。映画館を営むトーマス・ベームさんが暖房キノコの設置を検討した際に、これがいかに環境負荷の高いものかを知り、市に暖房キノコの使用禁止を求めるべく住民提案(市議会が特定の事項を取り扱うことを請求する制度)を提出した。提案は退けられたものの、市は啓発キャンペーンを約束した。それが実ったかたちである。

 個人のベランダに暖房キノコを見かけたときにはぎょっとしたものだ。人間の飽くなき欲望のために非効率な方法でエネルギーを無駄にするのがいかに愚かか、それが人間としての自分の尊厳を傷つけるものだとは、外から言われてすぐに気づくことではない。温暖化対策といっても聞く耳は持たないだろう。ケルンでは景観を損ねるという理由から、ニュルンベルクでは店外に喫煙者がたむろするのを防ぐ騒音防止の観点から、暖房キノコが禁止されたそうだ。こうしたアプローチも悪くないのかもしれない。
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by yumikov | 2011-04-21 07:15 | 環境のこと

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