ベルリンからローカルな環境政策や草の根NGO・市民活動、サステナブルな暮らしなどをレポート。


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グローバルネット記事『クリスマスツリーの一生』

月刊誌『グローバルネット』で連載中の「ベルリン発サステナブルライフ考」。1月号ではクリスマスツリーの一生というお話を書きました。クリスマスツリーを例に、木のことや家族と過ごす行事の意味など、皆さんと一緒に考えたいと思います。
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(以下、地球・人間環境フォーラム発行の月刊誌『グローバルネット』1月号より転載)

ベルリン発サステナブルライフ考
クリスマスツリーの一生
翻訳者 ユミコ・アイクマイヤー


 ドイツの新年の風物詩といえば、クリスマスツリーである。とはいっても飾ったツリーではなく、道端にごろんと転がっているツリーだ。ドイツでは生木を切ってツリーとして飾る習慣があり、毎年新しく木を購入する。クリスマスを過ぎてお役ご免になったツリーは、ベルリンでは年明けにベルリン都市清掃公社(BSR)が回収する。地区別に回収日が決められ、フリーペーパーなどで市民に告知される。ドイツではごみの回収は有料で剪定ごみも別にかかるが、ツリーの回収は無料である。クリスマスの雰囲気作りの主役ともいえるツリーが新年早々ごみのように出されているのを見ると、リサイクルされるとはいえ虚しさを覚える。BSR社によると、回収車約830台分のツリーが毎年回収されるという。

 ドイツ人にとってクリスマスは、家族で祝う1年で最も大切な行事である。子供のいる家庭にはツリーは欠かせない。プレゼントがツリーの根元に置かれるからだ。ツリーを置く習慣はいつ頃始まったのだろう。諸説あるようだが、ドイツではおおむね15世紀頃にさかのぼる。当初は貴重なモミを買えるのは裕福な家庭だけで、庶民へツリーが広まったのは19世紀後半のことだ。当時、森を所有していることが多かった教会の反対も、市民の習慣には勝てなかった。こうしてツリー栽培が始まった。


ツリーはどこからやってくる?

 クリスマスツリーは、現在ではドイツで毎年2,500万本が販売される大きな市場である。11月になると街のあちこちにツリーの臨時販売所が立ち並ぶ。数十cmのものから2m超のモミやトウヒ、マツがそろう。値段は15ユーロから、100ユーロを超えるものまである。現在ドイツで人気なのは葉先の丸いノルドマンモミだ。国産のものとしては香りの強いコロラドトウヒなどがある。
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 国内の産地としては、中西部の中級山岳地帯にあるザウアーラント地方やデンマークとの国境にあるシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州が主である。販売されるツリーの約10%は輸入で、その多くはデンマーク産だ。他にはオランダやポーランド、アイルランド、チェコから来る。ヨーロッパ全体では近年ツリー不足で、輸入ツリーの値段は上がっているという。東欧での需要が拡大したことや、過去に採算が合わずに商売をたたんだ生産者の影響が理由にあるようだ。お隣のオーストリアも同じような状況だが、ツリー生産者共同体は国産ツリーのPRを行っている。これが功を奏してか、市民は年々地元の木を選ぶようになってきているという。

 ドイツで売られるツリーの大半は森で育ったものではない。80%以上が高圧線やガスパイプラインの近くなどの特別用地などでプランテーション栽培される。ドイツでは1950年代にツリーの大規模なモノカルチャー栽培が始まった。これらは通常、殺虫剤や除草剤、無機肥料がたっぷりと施されている。均一に育ち、葉が濃い緑色になるようにだ。見た目よく育てるために遺伝子組み換えツリーも市場に登場する予定だという。


安全なツリー選びのポイント

 ドイツ自然保護連盟(NABU)は、認証を受けたツリーを購入するよう消費者に勧めている。お勧めは、bio、Naturland、FSC(森林管理協議会)の三つだ。bioは食品にも使われるEU共通の有機認証で、園芸センターでも目にする。Naturlandは三つの環境団体(ドイツ環境自然保護連盟BUND、グリーンピース、Robin Wood)による森林認証で、環境の視点からはFSCより厳格である。FSCは、持続可能性の視点から社会面・経済面も考慮した森林認証だ。NABUは、認証なしの木を買うのであれば、せめて地元の木、できれば間伐材を購入して欲しいと呼びかけている。Robin Woodでは、環境にやさしいツリー販売所を具体的に紹介している。このリストによれば、ドイツ各地の約40ヵ所で認証ツリーが購入できる。中には自分で切らせてくれる営林所もあり、それもまたいい記念になりそうだ。ベルリンでは、テーゲルやグルーネヴァルトの森にある森林局などでFSCとNaturlandの認証を受けたマツが買える。一方、近所の臨時販売所でも昨冬FSC認証の木を10本仕入れたのだが、まったく売れなかったという。そのため今年は置いていない。オーストリアのように地元ブランドや認証のPRがもっと必要なようだ。


バイオマス燃料と飼料に生まれ変わる

 ところで、BSR社によって回収されたツリーは、2009年からは電力会社Vattenfall社との協働によってリサイクルされている。年間約40万本が木片チップへ粉砕され、市内の二つの発電所へと運ばれる。これがコジェネレーションシステムで燃料として活用され、電気と熱を生み出している。ツリーから生まれる木片チップの量は年間2,700tで、褐炭2,000tの替わりとなり、3,000tの二酸化炭素(CO2)排出抑制効果と算出されている。このようなツリーの燃料としての利用はベルリン以外の自治体でも行われている。
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Vattenfallヨーロッパ・ベルリン支社代表クラウス・ピチュケ氏(左)、ベルリン都市清掃公社の代表ヴェラ・ゲーデ=ブッツラフ氏(右)と同社従業員たち


 また、売れ残ったツリーを動物園に運んで飼料にする取り組みは20年以上前から行われている。ゾウやアルパカ、クマ、ラクダ、シカなどが好んで食べる。葉の部分にある精油が消化を助けるという。

 木片チップも飼料も、有効利用という意味ではいいかもしれない。しかし、ツリーの回収にもエネルギーが使われるわけで、幼木が大量消費されることにも変わりはない。種子がまかれて2mになるまでには、樹種によって8〜12年かかるという。飾る期間は宗派や習慣によって異なるが、せいぜい2ヵ月だ。何年もの歳月をかけてようやく育ってきた木を、その2ヵ月のために一斉に切り倒す。根のついたツリーも一部売られているが、結局長持ちしない。鉢に入れて家の中の暖かい場所に置いた後にまた寒空の庭に植え替えても、もう木は生命力を取り戻すことはできない。

 Robin Woodはツリーを置かないというオルタナティブも提案している。ツリーが広まるずっと以前から、陽の差さない冬場に常緑の植物で部屋を飾って健康を願う習慣はドイツにあった。しかしそれは自然の宿す生命力をおすそ分けしてもらうという意味ではなかったか。折れた枝など身近にあるものを使って、松かさや鮮やかな木の実で飾りつけても素朴な美しさがある。家族の木をどこかに植えて毎年会いに行くなんていうのはどうだろう。ドイツでは新年ではなくクリスマスが1年で最も静粛で、自己や世界を見つめなおすときだ。その機会に子供と一緒にツリーについて根本から見なおしてみるのもいいかもしれない。


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週末をドイツのファミリーと過ごしてベルリンに戻ると、道端に転がっていたツリーがすっかり片づいていました。大晦日の花火の残骸に、犬の糞、すべり止め用の砂、1月あたまのドイツの路上はほんとうに目もあてられないひどい有様です。BSR社さん、ご苦労さまです。
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by yumikov | 2011-01-27 17:10 | 環境のこと

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