ベルリンからローカルな環境政策や草の根NGO・市民活動、サステナブルな暮らしなどをレポート。


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グローバルネット記事『「反原発」から「脱原発」運動へ』

月刊誌『グローバルネット』で連載中の「ベルリン発サステナブルライフ考」。11月号ではドイツで今一番気になる話題、原子力発電所の稼働期間延長にクローズアップして、新しい市民運動のかたちを取り上げました。

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(以下、地球・人間環境フォーラム発行の月刊誌『グローバルネット』11月号より転載)

ベルリン発サステナブルライフ考
「反原発」から「脱原発」運動へ
翻訳者 ユミコ・アイクマイヤー

 脱原発を掲げてから10年、ついにドイツ政府は現存する17の原子力発電所の閉鎖を先延ばしすることにした。これまで原子力法等の改正により新設禁止や稼働年数制限などを定めて、段階的に原発を閉鎖してきた。それが9月の決定により各原子炉は平均12年の稼働延長となり、ドイツから原発が消えるのは早くとも2036年になる。決定から2ヵ月経った今も、政府と企業との密約スキャンダル、国内での法改正プロセスやEU(欧州連合)内での手続き問題など、関連の報道で目まぐるしい。再生可能エネルギー推進のための負担増を理由に来年の電気料金の大幅値上げも発表された。

 ところで今回の決定はあくまでも脱原発のタイミングを先送りするもので、ドイツの政治には原発推進の議論は起きていない。世論が脱原発を示しているからだ。延長が具体的に議論され始めた昨年からは市民の抗議活動も活発になり、4月や9月のデモにはそれぞれ10万人が駆けつけた。「原子力ルネサンス」ならぬ「反原発運動ルネサンス」(1980年代ドイツの反原発運動の再来)と報じられるほどだ。稼働延長決定後の世論調査では、メルケル政権の支持率はかつてないほど落ち込み、緑の党は過去最高まで躍進している。


グリーン電力を買うことで原発をボイコット

 しかし、市民運動も変化してきている。1986年のチェルノブイリの事故の後のこと。ドイツの小さな町シェーナウでは、原発のない未来を目指す市民グループが誕生し、最終的には電力網を買い取り、原子力ゼロの電力を町に供給することに成功した。EU指令により全面的に電力自由化された1998年からは、ドイツでは個人も電気の購入先を自由に選べるようになった。シェーナウの市民のようにもう闘わなくてもいいのだ。

 電力供給専門業社、地方自治体の電力公社、グリーン電力専門会社など、現在参入している電力供給者は900社以上。9,000もの電力料金体系がある。しかし実際はRWE、E.ON、Vattenfall、EnBWの四大コンツェルンが独占している状態だ。原子力と石炭火力発電が事業の柱を成す4社の発電量と供給量のシェアは実質8割にも上る。グリーン電力を選ぶ消費者も増えつつあるが、まだ1割にも満たない。そこで21の環境団体が結集し、4年前から「誰にでもできる脱原発」キャンペーンを行っている。原発や石炭火力発電から完全に切り離されたグリーン電力へ乗り替えてもらうのが目的だ。お勧めの供給者をピックアップしてPRしている。
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政治的な態度と消費行動の矛盾

 9月の10万人デモの後には「反原発を叫ぶ人の多くもまだ原発による電力を買っている」といった報道がされた。ドイツの発電における再生可能エネルギーのシェアは約6分の1。だがドイツにある4,000万世帯のうち、キャンペーン推奨のグリーン電力を購入しているのは80〜90万世帯。そのほかのグリーン電力を購入しているのが100〜200万世帯。もっと伸びてもいいはずだ。

 キャンペーナーのフローリアン・ノートー氏は「みんなグリーン電力にも替えない代わりにもっと安い契約にも替えない。難しく考え過ぎている」と言う。ドイツの電気料金は欧州でも最高値に近く、年々上昇している。確かに人びとがより安い電力へと流れないのも不思議だ。これまで小売りで50%、産業界では100%契約を変更したのに対し、個人は25%だという。

 一つには「グリーン電力=高い」という誤解がある。実際は、使用状況に合わせて選べば、お得になることさえある。簡単に試算できるwebもあるが、調べもせずに高いと考える人は少なくない。安定供給に対する不安も根強い。再生可能エネルギーだけでは供給が不安定になるのでは? 風のない日や雨の日は停電が起きるのでは? どんな契約でもコンセントから流れてくるのは同じ電気ということは案外理解されていない。保険や税金申告はどうなるのか? メーターも替えないといけないのでは? 小さな不安も腰を重くするのに足りる。実際の手続きは契約書に記入して送付するだけ。検針メーター番号と大まかな消費量がわかれば10分で完了する。

エコ電力は「ほんとにエコ?」

 グリーン電力はドイツでは「エコ電力」と呼ばれる。法的な定義がないため、さまざまなエネルギーミックスと質の電力が「エコ」「クリーン」といううたい文句で売り出されている。グリーン電力の認証制度もあるが、新しい発電所からの電力割合が高いことや、再生可能エネルギーへ投資していることなど、基準もまちまちだ。原子力や火力発電由来の電力をグリーン電力と交換する証書システムもあり、基準を知らないと望んだものとは程遠くなってしまう。コストから認証取得を諦める小規模事業者もある。こうした事情も消費者に判断を難しくさせてしまう。

 キャンペーンで勧めているのはGreenpeace Energy、EWS、Naturstrom、Lichtblickの4社だ。基準は、1. 原子力とは無縁 2. エネルギーミックスの少なくとも50%は再生可能エネルギー 3. コジェネレーションの割合は最大50%まで 4. ドイツ全域に供給できるーーことだ。PRしてもらえる企業にとってはありがたい話だが、キャンペーンはいかなる企業からも資金援助を一切受けていない。「電力公社の多くは再生可能エネルギーに移行しようと計画し資金も準備している。それをサポートすることも大切だが、原発がある限り投資は進まない。そのためキャンペーンでは、お金の流れを原子力産業ではなく、再生可能エネルギーに向けることを優先課題にしている」とノートー氏。

 キャンペーンのリーフレットは今年だけでも15万部が配られた。親を説得するために注文する子供もいるという。原発の稼働期間延長の発表後は、注文は増えているそうだ。キャンペーンはまだ続く。


エネルギーを選べる時代が来ている

 わが家はグリーン電力最大手のLichtblickと契約していたが、基本料の安いEWSに乗り替えた。従量課金の割合が高ければさらに省エネする気が起きる上、EWS社は再生可能エネルギーへの投資方法も透明性が高く、自分のお金が未来をつくっている実感がある。これからはグリーン電力同士を比較、検討して選ぶ時代だ。

 最後にノートー氏に、個人が電力を選べない日本のような国では何ができるかと尋ねてみた。「まずは個人も電気を選べるよう自由化の拡大を求めること。シェーナウ市民のように電力網を買い取ること。この二つは難しいけれど、自宅の屋根に太陽光パネルを設置するのは個人でもできる。資金的に難しければ市民発電所に出資するのもいい。学校などの屋根に太陽光パネルを共同で設置してはどうかな? 一番簡単なのは省エネすること。シェーナウの取り組みも省エネから始まった。誰でもできる。お金も節約できる。」


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政府の法改正案の議会への提出が明日26日に控えています。これを通過すれば脱原発の先送りは本決まりですが、それには大統領の署名が必要です。市民団体は反対署名を10万筆以上集めて大統領に先週手渡しました。署名は現在12万筆以上になっています。過去に大統領が政府案に署名をしなかったのは一度きりだそうです。はたしてヴルフ大統領は署名してしまうのでしょうか?
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by yumikov | 2010-11-25 17:16 | 環境のこと

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