ベルリンからローカルな環境政策や草の根NGO・市民活動、サステナブルな暮らしなどをレポート。


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グローバルネット記事「旧東ドイツに端を発する環境市民運動」

月刊誌『グローバルネット』で連載中の「ベルリン発サステナブルライフ考」。7月号では旧東ドイツの環境市民運動をご紹介しています。

ひとくちにドイツと言っても、社会の抱える問題は地域によってさまざま。分断されていた時代の影響は、統一後20年たっても消えるどころかよりはっきりと浮き上がってきているのかもしれません。今回は統一までの旧東ドイツの環境運動の流れを振りかえりながら、旧東ドイツ地域をエコロジー面から元気にしようとがんばっているネットワークにクローズアップしました。
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以下、地球・人間環境フォーラム発行の月刊誌『グローバルネット』7月号より転載)

「旧東ドイツに端を発する環境市民運動」

 毎年6月ベルリンでは環境フェスティバルが開かれる。環境がテーマのお祭りとしてはヨーロッパ最大規模を誇り200以上の出展者が集まって多彩なイベントを行う。第15回目の今年は2日間に日程が増え、連邦環境省(BMU)と連邦環境庁(UBA)から助成を受けるまでに発展した。参加者数は13万人、サイドイベントの自転車デモへは20万人が参加したという。テーマは国際生物多様性年にちなんで「いのちは多様!」だった。主催しているのはグリューネ・リーガというエコロジー運動ネットワークである。


旧東ドイツ地域に根差す環境ネットワーク

 直訳すると「緑の連盟」という団体名は、緑からくる「自然」や「希望」のイメージと、「チームによる協働」というこの団体の特徴を表している。ドイツの環境団体といえばドイツ環境自然保護連盟(BUND)が各地に地域グループを抱える大手だが、グリューネ・リーガは旧東ドイツの環境運動の流れをくむ最大の環境ネットワークで、ベルリン、ライプチヒ、ドレスデン、ポツダム、イェナなど旧東ドイツ側12地域にメンバー団体や地域支部がある。

 交通、持続可能な地域開発、水、褐炭、自然保護、エネルギー、農業、遺伝子組み換え作物、エコツーリズムなど活動分野は幅広い。ベルリンでは、校庭の緑化、エコマーケットの運営、環境フェスティバル開催、環境情報紙の発行、水の民営化問題などに取り組んでいる。環境図書館の運営も行っており2,200点以上を所蔵し貸し出している。「ヴィジョンを持ち、ネットワークをつくり、行動を奮い起こす」をモットーとするグリューネ・リーガの活動を支えているのはアクティブな会員である。


東ドイツにおける環境問題

 つい忘れがちだが20年前までドイツそしてベルリンは東西に分断されていた。ドイツの環境保護の歴史を振り返れば1970年代の反原発運動や黒い森の保護運動が登場するが、それらは西ドイツのことであり、東ドイツはまた異なる状況下にあった。

 例えば東ドイツでは火力発電や化学産業の原料として環境負荷の高い褐炭が利用され、排出される二酸化硫黄によりひどい大気汚染が引き起こされていた。また老朽化した工業設備からは有害物質が河川へ垂れ流された。汚染廃棄物の処理問題もあれば、西ドイツからの廃棄物の輸入、ごみ焼却も問題だった。しかし一番大きな問題はこれら環境に関する情報が市民に閉ざされていたということである。経済成長に躍起になっていた東ドイツ政府にとって環境問題は国家機密、エコロジーはタブーであり、市民は西ドイツのメディア経由でのみ、こうした事実を知ることができた。こうした中、東ドイツ独自の環境運動が展開されたのも当然のことだろう。


「環境図書館」での秘密活動

 言論の自由もなく、政府にとって目障りな思想は排除、発行物は発禁処分という状況で、環境・平和活動を中心となって助けたのが教会だった。ベルリンの旧東側ミッテ地区にシオン教会という豪奢な教会がある。教会前には有機農産物の市が毎週たち、買い物客でにぎわう。さかのぼること20年。この教会から10mほど先の教区会館の地下に環境図書館が存在していたという。

 1986年9月のこと。当時の牧師ハンス・シモン氏が環境・平和運動を行う反体制グループに協力して教区会館の地下2室を活動のために提供した。図書館のほとんどが環境・人権問題の本や雑誌で、国家が発禁処分としていたものだった。そこは印刷所も兼ね、東ドイツ崩壊に至るまで反体制勢力唯一の雑誌を発行し続けた。

 1987年11月24日の晩、図書館に事件が起きた。国家秘密警察シュタージの襲撃が入り、環境図書館のメンバーの何人かが拘留され、印刷機も押収された。当時はシュタージの非公式協力員が職場や家庭などいたるところに存在し相互監視が行われていた。これに対し、教会組織を始め、ペトラ・ケリーやゲルト・バスティアンなど西ドイツの緑の党党員からも東ドイツの指導者ホーネッカー宛に抗議文が出されメンバーは無罪とされた。この人びとの連携した反対運動は西側のメディアでも伝えられ、かえってドイツ全体にこうした活動の存在を知らしめることとなった。ベルリンに続けと、その後、グライフスヴァルト、シュトラールズント、ドレスデン、イェナ、ハレなど各地で環境図書館が設立され、東ドイツ社会に大きなうねりを生み出した。

 その後、ベルリンの環境図書館のメンバーは政党を目指すグループとネットワークを目指すグループとに分かれてゆき、壁崩壊後に環境図書館はその存在意義を失った。解体後の蔵書は今のグリューネ・リーガの環境図書館に所蔵されている。


旧東ドイツ地域のこれから

 グリューネ・リーガは壁崩壊直後の1989年11月に設立された。創設者の一人であり現在は代表理事のクラウス・シュリューター氏は、「統一後には東ドイツにはなかった新たな問題が浮上した」と言う。

 シュリューター氏はロストック近郊のバルト海沿いの保養地バード・ドーベランの農家で育ち、自然保護や都市生態学に携わるようになった。環境図書館のグループで中心的に活動し、グリューネ・リーガを設立した後は、民主化の流れに乗って人民議会から無任所大臣に任命され、ドイツ統一間際のまさにすべりこみで東ドイツ初の国立公園を実現させた人でもある。

 「排ガス規制、河川の保全、環境情報へのアクセスの面では東ドイツ当時の目標を達成した」と言う。シュリューター氏が最も問題視しているのは、大量消費社会への移行、そして車の交通量の爆発的増加である。東ドイツでは自家用車を手に入れるまでは7年も8年も待機しなければならず「1家に1台が当たり前」という世界ではなかった。西の交通量を実際に目にして驚いたという。遺伝子組み換え作物や原子力発電所(旧東ドイツ地域ではすでにすべて閉鎖)などの新たな問題、さらにはグローバルに複雑に絡み合った問題に直面することにもなった。

 環境問題に限らず統一後の社会の変化は大きい。東西経済格差や西側への深刻な人口流出の問題を抱えながら、ドイツは持続可能な未来をこの先どのように描いてゆくのだろうか。社会の変革を促し、その変化に対応してきたグリューネ・リーガのようなネットワークの存在が注目される。

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